再会 エピソード2
時は遡り、私が20歳の頃。
私がバイトをしていた結婚式場では、平日は、会社のパーティーなども開かれる。
その日、私は”なんかのおえらいさん”に水割りをぶっ掛けてしまった。手が滑って、グラスをその人に向けて落としてしまったのだ。「も、申し訳ありません。すみません。ごめんなさい」 (← 余談だが、人は結構「すみません。ごめんなさい。」と一緒に言うものである。面白い)
隣にいたおっさんが「なんて事をするんだね!こんなえらい人に(だかなんだか)・・・・!」と怒鳴る。 一生懸命謝った。
バイトでは収拾がつかなくなったときは、後の始末は”黒服”(いわば、会場の一番上の人)がつけてくれる。
私は、裏の作業場に戻り、隅で泣いていた。失敗したショックと怒鳴られたショックで・・・・。
そのとき、ふと後ろに人が立ち、聞いた 「君、身長いくつ?」
・・・なんで、このひとは、こんなときに、こんなことをきくのだろう・・・・・・
ま、それがきっかけで、その彼と付き合うことになった。5歳年上のその彼は、私と同じぐらいの身長だったので、気になったらしい。友達が「爬虫類みたい」と酷評するその彼に、しかし私はぞっこんになった(・・・表現古すぎ?) お兄さんが欲しかった私は5歳年上の彼が嬉しく、また新鮮だった。バイクにも乗せてくれたし、タバコも教わった。
ところが、3ヶ月も過ぎた頃、電話もくれなくなったし、私がしても電話に出ないことが多くなった。(ちなみに、携帯のない時代)・・・振られたのだ。別れの言葉はなかったのだけど、振られてしまったことはわかっていた。
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10年の月日が経った。
友達の結婚式に行ったときの事だ。
披露宴会場。 黒服が椅子を引いてくれる。
「お久しぶりです。」
振り向くと、10歳年をとった彼が笑っていた。
まだ、結婚式場で働いていたんだ!!(説明すると、こういう業界ではバイトは派遣業に登録している。一ヶ所で長く働く事が多いが、他の結婚式場に移動になったり、短期で派遣されたりする)
それにしても、偶然である。数ある東京の結婚式場で、一日に数百と開かれている結婚式の中で、どうして出会えたのだろう。もしや、運命?!
その後、彼は私だけに”氷入りジュース”を持ってきてくれたりして、友達からは冷やかされたが、なにせ彼は仕事中。あんまり長く話してはいられない。
それでも、彼が今は結婚して子供もいることがわかった。しかも、奥さんに携帯を牛耳られているらしく 「携帯は教えられない。ここの結婚式場にはしょっちゅう仕事にきているから、ここに電話してくれれば会えるよ。」
・・・・・・??!なにそれは。
なんか、そこまでして会いたいと思わない。10年の月日は私を変えてしまったし、彼の中の”あの頃、私が感じた”魅力のようなものもすでになくなっていた。
というわけで、ほっておいた。運命なんてものはなかったのである。
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